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未来日記−月の杯−

しばらく、彼を抱きしめたあと

「私、自信ないよ」

それだけ伝えた。

YESでもNOでもない

「何がですか?」

「あなたと付き合うことに」

「自信ってどういう意味ですか?」

「今まで、ほんっと自由に過ごしてたの。連絡もしないし、電話もしない。会いたいときだけ会うってい

う・・・・・。相手の気持ちとか、そんなこと考えもしなかった。去る者は追わず・・・・みたいな。

だから・・・・、あなたを大切できるかとか、失望させてしまうんじゃないかって・・・・」

「大丈夫です。僕が夕子さんに寄りそうんで」

「えっ?」

「大丈夫ですよ」

・・・・・・安心感というのは、こういうことなのだろうか

大きな不安の目の前に立たされてもブレないものがあるだけで、前に進める勇気というか

「ありがとう。あなたは強い人ね」

「好きって感情は、人を強くするんです。会えば会うほどに気持ちは強くなって、でも一人になると急

に不安が襲ってくるんです。恋なんてしないほうが、楽だけどでも頭から瞼から離れないんですよ。

不安と幸せの瞬間が行ったり来たり。それでも、心がどうしようもなく夕子さんに惹かれてたんです」

「あなたは、優しい。そして優しいが故に強い人ね」

・・・・・・・彼の指に触れてみたくなった

細くてきれいでもう少し触れていたくなった

私の悪い癖が早くもでてしまった。

「あっ、ごめんなさい。触れちゃって。」

「いえいえ。」

お互いちょっと恥ずかしくなった。

「そろそろ帰らないと、電車大丈夫?」

「あっ、もう電車乗れなくてもどっかホテル泊まるんで僕のことは気にしないでください」

「あっ、今日は土曜日だ。終電早いんだったね」

「はい。だから気にしないでください」

「そっか」

その日、彼を近くのビジネスホテルの前まで送った。

決して、私の家に来たいとは言わなかった。

それでいい。

その晩、私たちは近いのに触れない時を過ごした

深夜までLINEを繰り返した

走ったら家から5分もかからない距離にいるのに、会わなかった

彼には簡単に触れられない。いや、触れてはいけない気がする

綺麗な宝石に安易に触れないような、そんな感覚に似ている

あのまっすぐな目に見つめられると、怖くなる。。。。。

少し身体が近づくと、逃げたくなる・・・・

彼が私への気持ちが強くなる一方、私の心は弱くなっていった

続く